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【全47本】2025年11月ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンだったアレコレ

2025年11月に私が出会った、DEIに関係するニュース、映画、本、イベントなどについて日付ごとにまとめています。今月はデフリンピック月間だったなー。
草冠結太 2025.12.01
誰でも

11月1日(土)とある絵画展にて

近所で開催されていた絵画展に行った。小学生の女の子の絵に目が止まった。描いた少女は弱視だという。近くの公園を歩いていたら視界が開けて、ふだんはしらない景色が広がったと。ますますその公園が好きになったと。この絵は緑が多用されている。女の子の服も緑色。絵のインパクトがものすごい。力強い。弱視でありながら、という言い方は不謹慎なのだろう。でも、この感受性、色彩感覚は、それこそ筆舌に尽くせないものがある。生でみると、ものすごい迫力だったよ。

緑がいっぱいの公園に少女が佇んでいる。少女の服も緑色で、後ろ姿が描かれている。深いブルーの青空。木立の向こうから明るい太陽がのぞいている。

緑がいっぱいの公園に少女が佇んでいる。少女の服も緑色で、後ろ姿が描かれている。深いブルーの青空。木立の向こうから明るい太陽がのぞいている。

11月2日(日)BEYOND STADIUM 2025

今年も行ってきた。今回は東京体育館から西新宿に場所を移して、二日間の開催。オフィス街のオープンスペースだったけど、場所をかえて正解だったんじゃないか。いろんな人の目に触れるし、明るくて楽しい雰囲気を演出できる。興味があればその場で入場エントリーすればいいんだし。プログラムもかなり芸能よりになっていたことも奏功している印象。一方、キッズの参加者は減ってたかも。私が行った時間帯だけだったのかもしれないけど。たくさんの人が参加してて、パラスポーツがメジャーになってきた印象を強くもったよ。

ビヨンドスタジアムの会場。ガラス張りの天井のイベントスペースにたくさんの人が集まっている

ビヨンドスタジアムの会場。ガラス張りの天井のイベントスペースにたくさんの人が集まっている

11月2日(日)アフター6ジャンクション2「映画の中の“ろう描写”最前線feat. 映画『みんな、おしゃべり!』」

最高に素晴らしい回だった。11月はデフリンピックもあり、ろうや聴覚障害に関するイベントがたくさん開催される。そのうち、映画「みんな、おしゃべり」と「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」について、長い尺をとって紹介されていた。どちらも興味があったから嬉しかった。言語について。マイノリティとマジョリティについて。情報保障という人権と憲法について。カルチャーという入りやすい観点から、とても深い話をきけた。私にとってろう者は、一番身近な他言語話者。彼らを理解することは、自分を理解すること。映画も芸術祭も、どっちも行こうと思ってる。

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11月3日(月)齋藤陽道写真展-働くろう者を訪ねて-

東京・品川でやっている、写真家・齋藤陽道さんの写真展に行った。マガジンハウスのメディア「こここ」の連載で撮影された写真たち。私はこの連載が好きで。、今回の写真展も良かった。ポートレートなのだけれど、齋藤さんが言う「この時代に生きたろう者の働く姿」のとおり、職業人としての凛とした空気が伝わってきた。法律の改正で、聴覚に障害があっても薬剤師やバスの運転手になれるようになっているとのこと。ここに来るまでこんなことすら、私は知らなかった。いろんな意味で行ってよかったよ。

会場入口の大きな写真。深い木立のなかにパーカー姿の男性が佇んでいる。両手は指揮をするように振られようとしている

会場入口の大きな写真。深い木立のなかにパーカー姿の男性が佇んでいる。両手は指揮をするように振られようとしている

11月3日(月)Netflix「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

娘と観た。ろう者の両親をもつCODAの話。とても味わいのある作品だった。まさか実話がもとになってるとは。とにかく役者さんが良かった。忍足亜希子さんと今井彰人さん。とくに忍足さんがすごかった。あの演技力、あの電話のシーン。ずっと忘れないと思う。

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11月4日(火)カンパラプレス「笑顔がつなぐパラスポーツの輪「BEYOND STADIUM 2025」で広がる共生の思い」

私も行ったBEYOND STADIUM 2025が記事になっていた。見ているだけで楽しい催しだったのだけれど、あれだけ本格的なパラスポーツ体験やエキシビジョン、トークセッションが、オープンスペースで展開されるのは珍しいはず。まして東京パラリンピックの後では珍しいような気がする。街頭のイベントスペースには制約が多いし天候にも左右されるから。その点、今回の試みは素晴らしいものだと感じた。パラスポーツが街の風景になる。そのことに、とても大きな意義がある。障害のある人だって、当たり前にスポーツをする。その光景こそ、当たり前になってほしい。なりつつある、と信じたい。

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11月5日(水)朝日新聞「家族と認めてくれた、胸を張れた 同性パートナー制度10年、残る課題」

東京都渋谷区と世田谷区が、同性カップルを公的にパートナーと認める制度を始めて5日で10年。10年前、私はこの制度のことを知らなかった。それが今や全国532の自治体で導入され、人口カバー率も90%以上。ここまで活動されてきた方々の、不屈の活動あってこそだと思う。この制度はなんとなくできたものではなくて、これを作った人たちがいて、その多くは市井の人々。身銭を切り、自分や家族との時間を犠牲にし、慣れない役所との交渉に疲弊し、何度も裏切られたり落胆したりしながら勝ちとってきたものだと思う。それを忘れたくない。

11月5日(水)朝日新聞「「同性婚までの過渡的措置」パートナーシップ制度10年意義と課題は」

「認識の転換には時間がかかります。まずは同性婚の法制化によって、スタートラインに立ち、その上で制度運用に慣れることが大切」。私も賛成。家族のあり方が変わるとか、社会的な同意が不十分とか。同性婚の法制化に反対する人の思い込みや気分や好みに合わせてても、機会損失の犠牲者が増えるだけ。一方、制度は必要な人が必要な時に使うものだから、関係ない人にはまったく無関係。つまりデメリットが偏重してるんだから、とっとと制度を法制化して、社会的に「ぜんぜんフツーじゃん」を知ってもらう方が合理的かつ効率的だと思う。高裁だって「法制化の未整備は違憲」って言ってるんだし。1日も早く「結婚」の自由をすべての人に。

11月5日(水)日本財団パラスポーツサポートセンター・日本福祉大学パラスポーツ研究所 共催シンポジウム 「東京パラリンピック大会開催に期待された社会変革の振り返り:大会から4年を経て」

非常に勉強になるシンポジウムだった。パラリンピック研究会最後のイベントらしく、すごく硬派な(笑)。報道のこと。人材育成のこと。研究・教育のこと。パラスポーツを通して、すべての人が生きやすい環境を整えるための内容だった。イベントに行ったり、子どもと体験したりしている実感としても合致する内容でもあった。パラスポーツに興味がある、パラスポーツの可能性に期待している人にとっては、必見だったんじゃないか。パラスポーツの学会もできてるのか!と驚いたりもした。これからも、こういうアカデミックな研究がどんどん発信されていってほしい。

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11月6日(木)読売新聞オンライン「デフリンピック東京大会15日開幕、スポンサー集め自前で着々…五輪汚職の反省生かす」

ほんとこれ。私はデフリンピックのDIY精神が好き。新しい施設は建造せず、ホテルも建てず、営業もボランティア集めも自分たちでやる。できることを積み重ねていく、できることを増やしていく過程にこそ教訓があるはず。なにより、そのほうが楽しいじゃない。近所のイベントに参加して、ますますそう思った。観戦に行くのが楽しみだよ。

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11月7日(金)こここ「働くろう者を訪ねて 武中元季さん【薬剤師】」

かつて、ろう者は薬剤師になれなかったこと。法律の改正でなれるようになったこと。それをつい先日知った。この記事では、国内初のサイニング薬局というのが素晴らしい。そこでの取り組みや工夫も。こういう薬局が増えるといいな。

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11月9日(日)手話のまち 東京国際ろう芸術祭2025

行った。これは物凄いイベントだ!ゴメン!侮ってた!雨なのにこんなにたくさんの人が来るなんて驚いた。手話話者の人もたくさんいて、とにかく手話でにぎやか。静かにワイワイ楽しい会場だった。これ大成功なんじゃない?ボランティアの人のホスピタリティに感銘を受けた場面もあった。私がお目当てだったパネルトークは、満員御礼で入れず。とても残念だけど、繁盛するのはいいこと。この場所の空気に触れられただけでも貴重な体験だったよ。今年はデフリンピックもあるに、ろう文化への注目と理解が高まるチャンス。いい流れに繋がってほしい。

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11月9日(日)Himeji IPA

姫路初のクラフトビール醸造所「イーグレブルワリー」のビール。東京国際ろう芸術祭の会場で飲んだ。すげー美味いの!フルーティな香りなのに、苦味は強め。高級なビールって感じ。贅沢した気持ちになったよ。これは飲めてよかったやつ。売店のスタッフさんはろうの方で。私は少しぎこちなくなりながら、笑顔でやり取りできたはず。交流の機会がもてるのも、こういうイベントあってこそ。貴重な体験だった。

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11月10日(月)朝日新聞「性別変更の外観要件、高裁が違憲判断 トランス女性「やっと…」」

戸籍上の性別を変更する際、性器の外観も変えるよう求める法律の要件は違憲か。東京高裁は、当事者の状況によっては違憲の事態が生じ得ると判断。立法府は裁量権を合理的に行使し特例法の改正をすべきだ、などとして、国会に法改正の議論を促した。とのこと。当人の生活における社会的な実態を無視して、国が身体を変えることを強要することは、人権の侵害で違憲。今回の判決で少し改善へ進んだ感もあるけど、この記事の最後につけられている有識者のコメントもとても参考になった。そういう実態もあるのか、と。

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11月11日(火)第20回難民映画祭「ハルツーム 命がけで戦火を逃れた5人が語るスーダンの記憶」

2023年から始まったスーダンの激しい内紛。1,000万人以上が難民となる中、映像作家たちが現実を世界に伝えようと奮闘。戦火に飲まれる都市とその中で生き抜く人々を見つめた。想像していたよりもポップでカラフル。音楽やダンス、CGもたくさん出てくる。見やすい作品だった。でもすごい切実で慄くようなシーンも。あの状況下で、なんであんな画が撮れるんだよ。グリーンバックで撮影する彼らを見て、当たり前だけどグリーンバックって世界共通なんだなと思ったら、スタジオによくある風景と重なって途端に親近感が湧いてきた。演技でトラウマが蘇り泣いてしまう人たちをみて、安易な親近感は禁物だ、とも。「大人は愚かだ」その言葉が胸に突き刺さる。

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11月12日(水)第20回難民映画祭「見えない空の下で」

ウクライナの地下鉄構内で暮らす二人に芽生えた友情の物語。監督らは自ら地下鉄で生活しながら撮影。約1,500名が混み合った環境で生活する地下鉄では、外から空爆の音が鳴り響き、わずか1㎞先が戦場となっていた、とのこと。まさに、ものすごいシーンの連続。観ていて「ああこれ、戦災孤児の話できいたことがある」と感じ、それが今、現実に起きているのかと、愕然とした。一方で画づくりがすごかった。目が離せない。自動改札の上で料理したり。エンディングソングもオシャレ。見応えがありすぎる作品だった。

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11月13日(木)第20回難民映画祭「アナザー・プレイス」

難民は年々増え続け、近年は戦後最多を更新。今や1億2000万人を超えたとのこと(2024年末時点)。この作品は戦争や迫害を逃れてヨーロッパにたどり着いた、コンゴ、シリア、アフガニスタンからの3人の難民を追った物語。孤独や精神的苦痛、人種差別に直面しながらも「新たな土地」で生活を築いていく苦悩や葛藤、力強く生きる姿を映し出す。これ、基本的には日本でも通用してしまう話。映画と似た状況で大変な思いをしている人がいるはず、というか多いかもしれない。

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11月14日(金)ジェンダー平等推進アワード

今年の受賞は渋谷教育学園渋谷高等学校による「LAMBDA Coalition〜高校生によるLGBTQ+授業〜」だった。授賞式では彼らが制作した、理解促進・学習のためのショートムービー「バレンタインまであと三日」も上映。めっちゃよくできていた。そして受賞された学生さんのスピーチが良かった。「若いのに偉い、とよく言われます。でもそれは違います。当たり前のことです。性の多様性は難しい話じゃない」。この子たちが政権とればいいのに。と思った瞬間、自分の情けなさも感じたよ。自分で学ぶことを学ぶのが教育なんだろうな。

11月14日(金)渋谷ジェンダー映画祭

オープニングイベント。映画「WE EXIST 私たちの居場所」の上映、Pride Choir Tokyoのライブパフォーマンス、渋谷区長らのパートナーシップ制度導入10年についてのトークセッションという内容。この映画祭、私が来たのは去年に続き2回目。この1年のもっとも大きな変化は、やはり五高裁の「同性婚の不整備は違憲」判決だと思う。それをうけ、最も先駆的な自治体である渋谷区がどう考えているのか。興味があった。その方針が、他の自治体に参考にされるはずだから。パブリックな視点からの話をきけて、へーの連続。歴史やデータの話も、とても勉強になった。あとちゃんとユーモアを混ぜるところにも、まじめな話を聞きやすくする工夫というか、センスを感じた。

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11月15日(土)デフリンピックスクエア

今日から開幕。まずはデフリンピックスクエアへ。企業・団体ブース、グッズ販売、キッチンカーなどが並ぶ。その他、屋内には休めるカフェや、UC技術の展示ブースなど。かなりの客入り。海外からもたくさん。もうろうの方もチラホラ。みんな手話で話してて賑やか。最寄りの参宮橋駅からして、手話の人がたくさんいた。私もボランティアスタッフさんに手話で話しかけられた。日本手話、国際手話、日本語。多文化が入り乱れた空間。居心地がいい。明日からの観戦も楽しみ。YouTubeでも配信があるから見る。

デフリンピックスクエアの会場。国立施設の屋外スペースを利用している。団体のブースやキッチンカーが並ぶ

デフリンピックスクエアの会場。国立施設の屋外スペースを利用している。団体のブースやキッチンカーが並ぶ

11月15日(土)デフリンピック開会式

今回は81の国と地域、3,000人以上の選手が参加する。ちなみに私がリアルタイムで観ていたときは、YouTubeの同時視聴者数が5,600人。これを書いてる今、視聴数は49,000回。そうか、そういう感じか。私は観る。断固、観る。最後まで見届ける。明日はバレーボールを観戦しにいこうと思う。

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11月17日(月)東京新聞「超満員で一時入場規制 東京デフリンピック2日目 熱気あふれる会場、選手も関係者もうれしくて」

本当に素晴らしい。私が行った時も熱気が凄かった。家族連れの姿も多くて、補聴器をつけた子どもたちの姿も。デフリンピックは、オリパラと比べて規模は小さいし、基本的にはDIY精神でやってる。俺はそこが好き。だからこの盛況は、運営も選手も嬉しいだろうな。俺もなんだか嬉しくなったよ。この記事を書いたのは東京新聞の神谷円香記者。たしか東京パラリンピックのときもパラスポーツの記事を書いてたと記憶している。記事には、氏ならではの温度があったように感じた。

11月17日(月)デフリンピック 【Day 3】陸上競技 日本手話言語【決勝】

ライブ配信が面白い。実況と解説がリアルタイムで字幕化される。だけじゃなくて、手話通訳者による日本手話も同時に映される。国際手話と英語字幕のバージョンも。これ競技によってかなり趣が変わるんだろうな。どうして字幕だけじゃなくて、手話も同時に映すんだろう。きっと理由があるはず。ちょっと調べてみようかな。勉強勉強。

11月17日(月)第20回難民映画祭「不安と希望のはざまで」

2024年12月、アサド大統領の打倒で半世紀にわたる独裁政権が崩壊。シリアは新体制への移行期を迎えた。本作は歴史的な激動の転換期の瞬間を捉え、期待と恐怖に揺れる国民の声を映し出す。シリアがここまで過酷な状況だとは知らなかった。タイトルこそ「不安と希望のはざまで」だけど、私だったら不安しかないだろう。もしくは絶望か。でも出てくる人は皆タフで前向き。本当に人間は逞しい、とか感動している場合じゃない。祖国とは何か。それを考えたことのない自分に気づいた。

https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff#movies

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11月18日(火)第20回難民映画祭「バーバリアン狂騒曲」

難民が村にやってきた!笑いと本音が交差する村の大騒動。という劇映画。ブルターニュ地方の小さな村が、ウクライナ難民を村に迎え入れようと準備を進めていた。ところが到着したのはシリアからの一家。住民たちの心優しさは、本当の思いや偏見とともに試されることになる。ユーモアがあってすごく面白かった。難民映画祭の映画で笑えるなんて思いもよらなかった。だからこそ登場人物たちの偏見や差別意識が、モロ観客に笑いかけ、問いかけてくる。なんだかんだで最後はハッピーエンドというのも、正直ホッとした。エンドじゃないね。ハッピースタートだ。これも名作。

https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff

https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff

11月18日(火)共同通信「バスケ日本、観客総立ちの勝利 東京デフリンピック第3日」

日本の男子チームが81―79でアルゼンチンに競り勝ち、今大会初勝利。世界ランキング19位の日本が5位のアルゼンチンを撃破。2点差!こりゃ総立ちにもなるわ。デフアスリートは審判の笛やブザーの音がきこえない・きこえにくいため、試合ではゴールの支柱やテーブルオフィシャル席の前面にLEDランプを設置し、 音に合わせて点灯させることで、視覚的に知らせる情報保障を行ってる。

11月18日(火)デフリンピック 【Day 3】Basketball【Non-final Matches】

リアルタイム字幕や手話通訳のない配信もあるんだね。全試合に付けるほどリソースがないのかもしれない。配信に字幕と手話の両方が用いられる理由を、自分なりに調べてみた。ろう者にとって手話は第一言語であることも多い。字幕が読みづらかったり、追いつけなかったりすることがある。字幕は同時変換だと誤字もあるし。手話は顔の表情なども情報になるし、口話や日本語対応手話を主に使う人、補聴器などを利用して音声情報を補う人などもいる。これが正しい理解なのか、いつか現場の人にきいてみたい。とはいえアクセシビリティの基本は、複数の手段を用いること。チャネルや選択肢は多い方がいいし、そうあるべき。たくさんあることで、他の誰かを阻害・妨害することはない。これって、他の社会問題にも共通することで間違いない。それを実感とてもっているかどうかは、これからの社会を考える・決める上で重要だし、こういったイベントの役割は大きいと思う。

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11月19日(水)第20回難民映画祭「あの海を越えて」

地中海のランペドゥーサ島沖で起きた海難事故。その船にはアフリカ諸国から欧州を目指す大勢の人が乗っていた。偶然現場に居合わせた8人の島民は、小型ボートで47人を救出。本作は、その記憶と彼らを結ぶ友情、そして「誰かを救う」ことの意味を問いかけるドキュメンタリー。とても美しい島景色の中で、とても過酷で悲惨な話が展開される。過酷すぎる。残酷すぎる。助ける方も傷を負うことがある。人を助けるというとてもシンプルなことを、自分だったらできるかどうか。それを強烈に突きつけられる。それにはきっと「慣れ」が必要なんじゃないか。助ける・助けられることの慣れが。だとすればやはりコミュニティというのがとても大切になる気がする。「海で死なせていい人などいない。それが海の掟さ」この一言がすべてを物語る。

11月19日(水)朝日新聞「手話で国歌斉唱 音に頼らず観客応援 デフリンピック・ハンドボール」

おお!そうか!歌も手話になるんだ!「君が代」のゆったりしたテンポに、どんな手話がのるんだろう。恥ずかしながら、これまでの国際スポーツ大会の手話通訳を覚えていない。この国歌斉唱のシーン、観たかったな。

11月19日(水)デフリンピック 【Day 4】Bowling【Non-final Matches】

デフリンピックにはボウリングがある。オリンピックやパラリンピックにはない種目。きこえる人と同じ国際ルールに準拠して行われるけど、選手へ投球開始や終了、中断を伝える部分がオリジナル。音声で伝えられないから、モニターに情報を投影するなど、視覚的に伝える。もともと設備ありきの競技なので、こういう情報保障はしやすいはず。ボウリングが公式種目になったのも、そういう理由があったりするんだろうか。

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11月20日(木)第20回難民映画祭「ラジオ・ダダーブ」

わずか25分にして大作。ケニアのダダーブ難民キャンプで、難民自身が運営するラジオ局のジャーナリストとして活動する女性のドキュメント。内戦から逃れてきた旧来の住民に加え、気候変動による飢餓や干ばつから新たな難民が流入。その現実と変わりゆく暮らしを記録する。そうか、難民は戦争や内紛だけではなく、気候変動によっても生まれうるのか。作中のアフリカの景色は、壮大で美しい。そのぶん、旱魃などの気候変動が、巨大な恐怖として迫ってくる。日本の殺人的な夏を思いかえせば、もう地球上に安全な場所などないことがわかる。毎年2100万人以上が気候変動で難民になっているとのこと。しかも温室効果ガスは先進国の責任。ケニアの彼らの生活は、私たちの生活を地続き。正直、Chat-GPTを使うことが後ろめたくてしょうがなくなった。

11月20日(木)荻上チキSession「【特集】音のないオリンピック、デフリンピックの意義と魅力(佐藤晴香、早瀨久美、川俣郁美)」

とてもわかりやすい特集だった。動画で手話がついているといのもいい。ラジオだけれど動画。それもまたアクセシビリティ対応の一つなんだろう。トークの内容もとても面白かった。競技のことだけじゃなくて、アスリートの仕事やキャリアについての話、ひいては法改正の話など。とても勉強になった。

11月20日(木)読売新聞「スポーツの臨場感を伝える「手話実況」、実況者の育成まで始めた地方テレビ局の意気込み」

岡山放送がろう者と一緒に、スポーツの手話実況に取り組んでいる。手話は上半身すべてを使う。アナウンサーは動きを獲得し、視聴者は情報を獲得する。協力することで、新しい地平が見えてくる。実況では、スピードに追いつくために、単語を区切って短く表現するらしい。あ。これ、映画の音声ガイドとそっくりだ。「音のない世界で情報を伝える実況は『伝える』ことを突き詰めること。日々新しい気づきにあふれている」とのこと。まさに言語との出会いは、気づきに溢れているよね。

11月20日(木)デフリンピック 【Day 2】オリエンテーリング 日本手話言語【決勝】

オリエンテーリングはオリパラにはない、デフリンピックならではの競技の一つ。まず、オリエンテーリングって競技だったのね、という発見。日比谷で試合かよ、という驚き。走る選手を追跡撮影できないはず。どうやって実況するんだよ、という好奇心。映像を見たら、やっぱり新鮮な観戦体験だった。相当の工夫と苦労と挑戦のうえで実現したことが、よくわかった。どんな縁があれば、オリエンテーリングという競技と出会うのか。そして選手にまでなって、あんなビルの谷間で駆け抜けることになるのか。ドラマだわ。

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11月21日(金)第20回難民映画祭「カブール・ビューティ」

ソフィアとニギナの親友同士は、アフガニスタンのカブール中心部の美容サロンで仲間と働く。二人は安全と自由な暮らしを求めて国外へ逃れることを決意する。タリバンの悪口言ったりする普通の女の子たちの話。メイクやオシャレやダンスを楽しむ彼女たちは本当にチャーミング。サロンの様子も含めて、日本の女性たちとなーんにも変わらない。たぶん「イケてる女の子たち」なんだろうな。そんな二人が国外に逃げることを画策するのだけれど、まさかの展開!そしてさらなる展開!これがドキュメンタリーだとは。カブール、パリ、ハンブルク。よく撮ったなー。しかも自由とは何か、友情とは、愛情とは何か、というところまで考えさせられる。タリバンによる女性への抑圧は目を覆いたくなるシーンも多々あった。権利を奪うこととは、どういうことか。それを生々しく描いている。「泣かないでよ。アイラインが落ちちゃうわ」あの抱擁のシーン、夢を語り合うシーンは、本当に泣ける。後日譚まで考えさせられるもので、とても射程の広い作品だった。

11月21日(金)アフター6ジャンクション2「「難民映画祭」をワンショット」

難民映画祭が紹介されていた。私もみた「カブール・ニューティ」と「バーバリアン狂騒曲」が入門編としてオススメされていた。私もそう思う。この二作は見やすくて、こういってはなんだけどとても面白い。私にとっての今年もっとも印象に残った作品ベスト10に入る。

11月21日(金)デフリンピック「【デフレスリング】東京2025デフリンピック レスリング(グレコローマン)」

あ。デフリンピック公式だけじゃなくて、TOKYOパラスポーツチャンネルでも配信してた。こっちは少し画面構成とかサムネイルとか凝ってる。こちらは実況の声に手話だけがつくパターン。字幕はアーカイブの時みたい。リアルタイムだと、やっぱり誤字変換とかあるからだろうか。いろいろなスタンスや技術で試行錯誤して、次のスタンダードができていくのを目の当たりにしている感じ。

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11月23日(日)デフリンピック 卓球団体

東京体育館で観てきた。すごく心に残る観戦体験だった。試合の合間に座席でランチしてたんです。ランチと言っても、豆腐なんですが。私、パックの豆腐がお弁当なんです。タンパク質。が、それを床に落としてしまって。やっちまった。フロアマットにこびりついた豆腐をハンカチで拭いてたら、隣のおじさんがポケットティッシュをくださって。私、ちゃんと手話で「ありがとう」を返せた。おじさんはサムアップしてくれて。それが嬉しかったなぁ。その後おじさんが、周囲を見回してクンクンしてたけど。ごめんなさい。それ、私がこぼした醤油の匂いです。さらに観客席の盛り上がりもよくて。たぶん小学生の子たちなんですけど、サインエールを選手に送って、一所懸命に応援してた。背中を振り返って、いまいちノッてない大人たちを煽ったり。みんなと一緒に応援するって、楽しいんだなって、改めて思ったよ。ほんとに来れてよかった。

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11月24日(月)スポーツFUN PARK

デフリンピックを観に来たら、たまたまやってた。たまたまというには大きすぎる規模と賑わい。デフスポーツだけじゃなくて、パラスポーツの体験もできる。これはいい。とかく忘れられがちだけど、重複障害の人もいるから。デフとパラ、運営組織としては別物だから、コラボするのもなかなか大変なはず。主催が東京都だからこそできた側面はあるのでは。税金の正しい使い方な気がする。娘も喜んでたよ。

11月24日(月)デフリンピック バレーボール男子 日本vsフランス

再び観戦。今度は妻子と。妻が元バレーボーラーということで。たまらん試合だった。すげー面白いの。スパイクの威力がどんどん高まってくるし。観客席のサインエールも熱を帯びて、ウェーブみたいになってくるし。最高だった。あとフランス選手がとても陽気というかハイテンションというか。やっぱ踊ってた。

11月24日(月)デフリンピック 陸上競技 女子リレー

フィールドには、選手にスタートを知らせるスタートランプ。観客向けに字幕モニターと手話を映した屋外ディスプレイもあった。パラリンピックと大きく異なるのは、情報保障や伝達についての技術が導入されていて、しかも最先端ではなく、他の場面でも応用がききそうなところ。これほんと大事だと思う。この大会のノウハウは、必ずどこかにアーカイブされて、応用導入されていってほしい。

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11月25日(火)デフリンピック 【Day10】空手 日本手話言語 【決勝】

組手の場合、審判員の「やめ」がきこえない選手は相手への攻撃を続けてしまうことがある。だからライトを使って視覚的に知らせる。試合残り15秒のブザーもしかり。また、コーチは選手と同じサイドに座るのが一般的なんだけど、デフリンピックでは選手とコーチが視線を合わせやすいように、対角線上の位置に配置する。組手はつまりド付き合いだから、一歩間違えばケガになる。鍛錬してる選手の拳ならなおさら。一見しては分からないけど、デリケートな工夫が重ねられてるのね。

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11月26日(水)デフリンピック 【Day 11】マラソン 日本手話言語【決勝】

首都高を封鎖してやってた。しかも私の職場の近くだったらしい。たまげた。中継は、いろんな場所からカメラが選手を据えていた。手話実況の人もおそらくグリーンバックのスタジオで、映像を合成しながら配信してた。力が入っていることが一目瞭然だった。デフリンピックの認知度は開催前で30%そこそこ。正直、お仕事で首都高を使っている人は「なんだかなー」だったかもしれない。だからこそ、デフスポーツがもっと有名になって、社会的な理解が進んでほしい。デフアスリートは一見して、障害がわかりづらいことも多いから、そういう意味でも認知があがってほしい。

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11月27日(木)第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025 閉会式

シンプルで、派手渋。最後には、ドドンがドンな盆踊りをベースにした「ええじゃないか」的ダンスで大団円。選手たちのやけっぱち感のある踊りが清々しかった。ダンスは身体表現。工夫してビートを共有できれば、意外と共通言語になりうるのか?生で見たかった気もするけど、このダンスに付き合わないといけなかったら、しんどかったかも。そうはいっても、デフリンピックは面白かった。

11月27日(木)朝日新聞「ろう者が見たデフリンピック 大会理念は評価、ただ「ムラがあった」」

この記事は、とても視点が多くて勉強になった。開会式の君が代(実は、君が代の歌詞を日本手話でどう表現するか定まっていない)。試合会場での手話通訳の誤変換や音楽の使い方、などなど。ただ中継を見ているだけ、会場にいくだけでは、知る由もなかったことがたくさんあった。明らかに配慮がたりなかったこと。避けられたはずのこと。可能性をゼロにはできなかったこと。いろいろあると思う。ろうは文化だという。新しい文化をまるごと学ぶ姿勢で、次に活かしてほしい。問題は、このナレッジのアーカイブと共有なんだよな。

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11月28日(金)読売新聞「日本初開催、デフリンピックでメダル51個…熱気の裏で浮かぶ課題」

とてもよくまとまった記事だった。他紙が運営上の課題を指摘しているのに対し、こちらはパラリンピックとの比較で整理。認知や環境整備に言及している。パラリンピックとデフリンピックの歴史のおさらいや、パラリンピックがもはやスポーツ界の中心軸の一つと捉えたられているのも興味深かった。おそらく今後は、パラスポーツとは別に、デフスポーツという概念・ジャンルも確立していくのだろう。そうなるとパラでもデフでもない、いわゆる”ふつう”のスポーツは、なんて呼ばれるようになるのだろう。だって、パラスポーツもデフスポーツも「スポーツ」だから。「スポーツ」が指し示すものが多様化し、意味が広すぎて使いづらくなる日がきっと来る。そうやって既存のものを問い直し、解像度が上がって、共存を前提とした再定義・アップデート・調整がなされていくのが、こういう催しの意義なんだと思う。

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