【全33本】2025年4月ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンだったアレコレ
4月1日(火)SAMANSA「ルル」
母親の寝室に侵入した少年。そこは、彼にとって本当の自分になれる場所だった。昔のアメリカCMみたいな、カラッと粋な作品。影の主人公は父親。彼がいい。2分あまりの良作。こういうパパが増えるといーなー。
4月2日(水)Spotlite「「きつね色」を視覚障害者はどう判断すればいい? 味の素がレシピサイト「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」を公開」
これめちゃくちゃいい取り組み。スマホやPCの読み上げ機能に頼り切りではなくて、メーカーが、それも食品メーカーが工夫して発信するというのも意義深い。企業のパーパスにそってる。さらに、視覚に障害のある人が、聴覚、触覚、嗅覚をフル動員して料理をしていることもよくわかる。自分からは、とても豊かな料理体験にみえたよ。ダイアログ・イン・ザ・ダークのみきさんの人柄もありそうだけど。今サービスサイトを見たら、かなり豊富なラインナップのレシピが載ってた。問題はこれを続けるかどうか。注目集めの出オチ企画かどうか、問われるところ。DEIに逆風の世情だからなおさらかな。味の素さんにはぜひ頑張ってほしい。
4月3日(木)スウィング個展「WE ARE HYOGENZOKU !! ♯︎02」
京都の福祉施設「スウィング」の個展に行ってきた。娘と一緒に。会場は東京・板橋のJギャラリー&カフェ。自閉症者と知的障害者のアート作品を展示・販売する画廊。とにかく作品が素晴らしかった。娘にも大評判で、親子で気に入ってしまった絵を購入。この絵の何が好きなのか、どこがいいのか。会話をしながら鑑賞した。そしてカフェとしてのひとときも素敵な時間だった。オーナーのご子息で、自閉症の男性にもてなしていただく。楽しかった。帰り道、自閉症や知的障害についても娘と語り合った。貴重なアート体験だった。

ピンクのナマケモノの絵に見いる娘
4月4日BuzzFeed「『ウィキッド』主演、力強いメッセージにネット&共演者称賛「涙が止まらない」「反多様性の動きがある今、必要な言葉」」
俳優のシンシア・エリヴォが、第36回GLAADメディア賞の授賞式で特別賞を受賞。スピーチが素晴らしかった。「どんな困難にも負けずに咲かせる花もある。でもほとんどの花は、咲かせる前に手をかけ、世話をしてもらう必要があります」「ですが、我々の本当の使命は、次の人たちのために“でこぼこの道”を平らにしてあげることです。自分を探しても探しても、まだ見つけられていない人のために」「ここには、それができる人たちが集まっている。自分らしさを世界に示し、これまでの道のりとこれから進む道を照らす存在になってほしい」この記事、パンチラインしかない。何のために名声を手に入れるのか。自分が輝く場所を目指したのか。その時、照らし出せるものがある。「スター」ってそういう意味でしょ。素晴らしいスピーチだった。ウィキッド、早く見にいこうっと。
4月4日(金)映画「ウィキッド」
やっと見れた。ものすごい映画だった。人類がしでかしてきた、そして今も続いている過ちの多くが描かれている。マクロな視点でも、ミクロな視点でも。描かれ方は多様性をテーマにしているのだけれど、物語はもう一歩踏み込んだ、尊厳や戦いの話。褒めるところを上げたらきりがない。華やかな絵作りだからこそ、主人公の孤独が鮮やかに浮き彫りになるのはさすが。主人公の孤独に自分を重ねられるかどうかで、見応えが大きく変わってくる作品だと思う。いつか子どもと見たい。

4月7日(月)カンパラプレス「誰もが一緒に楽しめるボッチャ大会、タイ代表が頂点に!【BOCCIA JAPAN CUP 2025】」
この大会は、障害の有無に関わらず、誰もが参加できる形で行われたインクルーシブな取り組みで、48チームが出場したとのこと。夏の甲子園とほぼ同じ数のチームが出るじゃん!出場チームも日本代表、タイ代表、大学や企業のボッチャ部、スポーツ団体、テレビ局チームが出場。障害の有無に関係なく参加できる競技は、車いすバスケとかブラサカとかいろいろあるけど、ボッチャほど盛んな競技はないんじゃないか。たぶん私の知っている大会風景とは大きく違ってるんだろうな。今度観戦に行ってみよう。
4月8日(火)SAMANSA「文盲のライアン」
読み書きのできない青年ライアンの物語。現代も残る成人の非識字問題を背景に、希望と復活を描く。朝っぱらから泣けてしまった。。。何がいいってライアンの友達タイロンがまじでいい。彼の力を借りて文字を覚えたライアンが最初に読んだ手紙とは。そして、その後にとった行動とは。友達を大切に。俺も友達になにかできないか、考えてしまったよ。友達少ないけど。少ないから、かな。
4月9日(水)Spotlite「「きっかけは逆ナンでした!」フリーランスの私がガイドヘルパーになった理由」
タイトルのパンチ力よ。視覚に障害のある方の外出を支援するガイドへルパー(同行援護従業者)の仕事を興味深く読んだ。視覚に障害のある人にもいろんな事情があるように、ガイドヘルパーさんにもいろんな事情がある。それぞれの事情を持ち寄って、対話を重ねながら、うまいこと折り合って、一緒に歩いていく。ときには、知らない場所へも。これって、どんなコミュニケーションにも共通のことなんじゃないかな。だとすると、ガイドへルパーはとても奥深くて、素敵な仕事なんだろう。
4月10日(木)ふらっと新宿(四谷店)
障害者福祉事業所などで作られた自主製品などを販売している「ふらっと新宿(四谷店)」で、ハンカチを2枚購入。かわいいやつを買えてとても満足。質も良さそう。自分はなかなかボランティア活動などをする機会を作れずにいる。だからこそ、できるだけ「買う」という支援はしたいと思う。なんていうのは後付けで、ここの商品はデザインが可愛いものが多いから買ってる。おしゃれ音痴の自分にはありがたいお店。

お針子のハンカチとハンバガーのハンカチ。いずれも白。背景にふらっと新宿の店舗
4月11日(金)アフター6ジャンクション2「プルーストの匂い」
いつも聞いているラジオ番組の、リスナーお便りコーナー。今回は、大学生の頃に重度知的障害の訓練所でボランティアを経験し、後にご自身も第二子に自閉症が分かった方のお話だった。仕事しながら聴いてて。素晴らしい話が不意打ちできて涙腺にきてしまった。自分だけじゃなく、他の人の人生も豊かにする、一生ものの経験というものがある。私はもう40代だけど、まだそんな経験ができたらいいなと、諦めてなかったりする。
4月13日(日)アフター6ジャンクション2「新しい「第九」の合奏プロジェクトとは?」
NPO法人スローレーベルによる、障害の有無に関係なく参加できる「第九」の合奏プロジェクトが紹介されていた。ゲストはプロデューサーであり、東京パラ・開会式のステージアドバイザー栗栖良依さん。ご自身も骨肉腫で障害を負ってらっしゃる。障害のある人とない人、どちらも参加できるイベントというのはたくさんある。でもこのプロジェクトが一線を画すのは、初対面の人たちがいきなり第九を合奏するために、工夫が重ねられているという点。とてもクリエイティブ。だから求心力がある。そして、それを形にする実行力もすごい。このイベント、一度生で体験してみたいな。
4月13日(日)スウィング個展「WE ARE HYOGENZOKU !! ♯︎02」
京都の福祉施設「スウィング」の個展を再訪。作家さんが京都からやってきて、「似せる気がない似顔絵」を描いてくれる日だったので。会場は最高な雰囲気だった。知的障害の方がおり、自閉症の方がおり、どっちでもない方もおり。保護する/されるだけの関係ではなく、一緒に絵を楽しむ場をみんなで作っていた。あのピースでフェアな雰囲気は、スウィングならではなのかもしれない。スタッフさんと利用者さんが、どれだけ密な関係を重ねているか、もしくは距離感をデザインできているか、を物語っていた気がする。ちなみに、描いてもらった似顔絵は想像よりもはるかに似てた。

4月14日(月)荻上チキSession「【前・後編】社会学からひも解く<恋愛>〜バレンタインデーをきっかけに考える(高橋幸x永田夏来)〜」
少し前のラジオ。恋愛を社会学の見地から分析するという内容。とても印象的だったのが、シスヘテロ偏重の恋愛観ではなく、多様な性のあり方を前提にしているところ。こうなると「恋愛とは?」という問いに対して「その問いはどんな人のどんな条件を前提にしているのか?」という問い返しから始まる。たとえば「恋愛と友情の違いとは?」というベタなテーマも、アプローチが変わってくる。アプローチが変われば結論もアップデートされる。かつて恋愛というマーケットゲームに巻き込まれ、ほとんど興味をもてずに歳を重ね、結婚を機にそこから降りた自分としては、とても興味をもてるし、共感できる内容だった。俺、無理させられてたんだなぁ。
4月15日(火)こここ「佐野安弘さん【精肉店】〜働くろう者を訪ねて|齋藤陽道〜」
昭和54年に、佐野さんはお店を引き継いだ。私が生まれた年だから、キャリア45年以上。「手話を覚えてくれるお客様が増えてきましたね」「地元の小学生たちの見守り活動をしました。そしたらみんなが感謝状を持って、手話で「ありがとう」と言いにきてくれた」。温かいエピソード。この静かな動画を見ると、地元に愛されるお人柄が伝わってくる。精肉店だから接客業。ご苦労もあったろうけれど、それをまったく感じさせない朗らかで、でも骨太な記事だった。久々に立石に飲みに行きたい。あ。街並みが変わってしまったときくけれど。
4月16日(水)ハフポスト「映画のバリアフリー上映は「特別な配慮ではなく、当たり前の基準」。音声ガイドや字幕付き、洋画ではたった1.4%」
「2023年に公開された映画でバリアフリー上映に対応しているのは、洋画では556本中わずか8本、邦画では620本中132本にとどまる」「バリアフリー上映対応の洋画は、2023年に上映された8本の中で、7本は「シネマ・チュプキ・タバタ」が独自に制作・上映したものだった」とのこと。バリアフリー上映、子どもと一緒に体験したことがあるけど、とても理解が進んだ。今のところ障害のない私たちにとっても、とても意義深いものだった。作品を深く鑑賞するための有益な補助線。さすがのチュプキ・タバタ、とか言ってる場合じゃない。映画全体における普及が急加速するといいな。カルチャーコンテンツは影響力の大きいからこそ、情報保障の先陣を切ってほしい。
4月16日(水)SAMANSA「ゲイのファーガス」
セクシュアルマイノリティに対する転向療法を風刺する作品。もちろん転向療法など馬鹿げている、という内容。一応コメディとは謳ってるけど、いろんな意味で笑えなかったなぁ。とくに最後のオチ。何も解決できてないというか、主人公の個人性に決着しているところが腑に落ちない。タイトルも、もっとどうにかならなかったのかね。とりあえず犬がかわいそうなことにならなくてよかった。
4月17日(木)JBpress「「ボランティアの醍醐味」はパラスポーツにある、パリパラリンピックの日本人ボランティアに聞く」
パラリンピックに限らず他のパラスポーツ大会でも、ボランティアさんはみんな明るくて積極的な印象。それってたぶん参加意識なんだろう。ボランティアというと無料奉仕みたいな印象をうけるのは私だけかもしれないけど、大会になくてはならないという意味では、第二の選手と呼べるんじゃないか。記事中でも「究極の多様性の場がパラリンピックの選手村」とあるとおり、パラスポーツだからこそいろんな背景を持ったボランティアが、積極的に参加しやすい、ということもあるのかも。多様性は人を呼び寄せる。
4月17日(木)ロバート・キャパ写真展「戦争」
東京都写真美術館で開催されていた、ロバート・キャパの写真展に行った。彼の作品は、戦争を切り取っているにも関わらず、柔らかく見えた。つまり今を生きる私自身が、あまりにも残酷な写真を見慣れてしまっている、ということだ。その事実に最も愕然とした。多様性も公正性も包括性も、平和あってこそ。戦争は、DEIの対義語の一つだ。もし彼が現代に生きていたら、果たして何を撮っただろう。

4月17日(木)映画「アノーラ」
セックスワークも毒親も、両方身近にあった自分としては、身につまされた。「どう生きていけっつーんだよ!」そんな境遇を抱えた二人の、若い愛と抵抗と裏切り。形は違えど抑圧された若者二人の恋(と言っていいのかどうか)を描いた作品。私にはとてもタフで、シビアで、残酷な映画に見えた。戦いの後、ラストシーンでアニーが見つける慰めに似たものは、とても儚いものだと観客は知ってる。でも人は気休めで生きている。彼女にそれが見つかってよかったと思わずにはいられない。イヴァンはクソ男でまったくもって許されざる者だけれど、彼もまた許されることなく育てられ、生きてきた、逃げ場のない被害者なんだ。アニーは単なる悲劇のヒロインじゃないし、イヴァンはクソなだけじゃない。キャラクターは重層的に描かれており、しっかりエンターテイメントになっているけれど、終幕はオープンエンド。その解釈は観客に委ねられている。何かを背負っている大人(R18映画です)なら、見応えのある映画。

4月18日(金)ヨミドクター「万博トイレ4割「オールジェンダー」、性的少数者に配慮…「使ってみたい」「入りづらい」反応様々」
トランスジェンダーの方や異性で介助されてる方など、男女別のトイレは利用しづらいという人がいる。だから、男女別トイレに加えてこういう「誰もが使いやすいトイレ」を目指す取り組みは、積極的に進められてほしいし、周知されてほしい。そういうトライアルあってこその、万博という試験的フィールドなんじゃないだろうか。導入結果としての意識の変化なども、万博後にデータとして残され、改善に活用されてほしい。と、万博に懐疑的な私は思ったりする。盗撮などの性犯罪に対する防止策も含めて、トイレくらい誰もが安心して利用できるものであってほしいよ。
4月18日(金)短編映画「誰も悪くないのにね」
結婚の平等(同性婚の法制化)の普及啓発に向けて、同性パートナーがいることをカミングアウトした息子と、カミングアウトを受けた家族を描いた短編映画。当事者の方たちから寄せられた実際のエピソードに基づいて作られたそう。うーん。。。この動画、メッセージのベクトルが「結婚の平等」「同性婚の法制化」に向かってないように見えたのは、私の見識が低いからなのか。結婚というものに関しては、親が子どもの意識に追いつくのに時間が必要になることがある。同性パートナーならなおさらだろう。時間がかかる。それは、時間をかけれることができれば、という一縷の望みでもある。家族だからこそ時間をかけられる、のかもしれない。10分間という短い映画だからこそ、その点は際立って感じられた。
4月18日(金)イベント「じぇんだーりぶNight」
銀座のとあるスナックで開かれた、ジェンダーに関する話をするイベントに参加。私はニュースや書籍で知ったこと、あるいは研修で習ったことを、場面場面で「正解」として提示することはには慣れているけれど、対面で、それも初対面の方だらけの中で、自分の考えを表明する機会は、ほとんど経験してこなかった。だから、このイベントはとても貴重で学びになった。お酒をいただきたながら、というのも乙。とても素敵なイベントだったので、ぜひまた行きたいなと。こちらはお土産にいただいた、アフリカローズ。フェアトレード。とても美しい薔薇だった。

4月19日(土)「車いすラグビー SHIBUYA CUP 2025」
ひさびさのパラスポーツ観戦。車いすラグビー SHIBUYA CUP 2025を娘と観に行った。やっぱ生観戦は迫力が違う。そして体験コーナーもあり、衝突事故のようなタックルの恐怖を体験できた。これは楽しい。めちゃくちゃ楽しい。娘にも大評判だった。帰り道、彼女は「車いすでもラグビーできるんだね」と言った。そうなんだよ。そこからいろいろ発見していってほしい。

4月20日(日)moriuo氏イラスト展「Loneliness and Joy」
東京・東中野のplatform3という書店で開催されていた、moriuoさんのイラスト展「Loneliness and Joy」に行った。作品群はゲイの少年たちの、一連の恋物語にして成長物語になってて、それが切なくも温かいのだけれど、柔らかいタッチのイラストがその世界の空気を10倍にも20倍にも膨らませていて。絵の中の彼らともう同じ世界にいたくて、自分としては少し長居してしまった。イラストブックも購入。素敵な鑑賞体験だった。

4月21日(月)カンパラプレス「車いすラグビーの国際大会で日本は2位【SHIBUYA CUP 2025】」
大会は、昨年のパリ・パラで金メダルに輝いた日本、銀メダルの米国、銅メダルの豪州の3カ国から、次世代選手たちが出場。日本は通算3勝3敗で全日程を終え、2位に入った。私は二日目を観戦しに行ったけど、それはそれは物凄い迫力だったし、見応え十分だった。子ども連れでも楽しめるラグ車体験コーナーもあって、娘も興奮しまくってた。車いすというものの常識が変わる。それはつまり、車いすユーザーへの偏見が覆る、ということもでもある。行ってよかった。パラスポーツは体験コーナーが充実している大会も多い。次は娘の友達も誘って行こうか。
4月22日(火)LGBTER「レズビアン2人の子育ては、子を守り育てるだけじゃない。大切な家族だからこそ “もしも” を考える【後編】」
レズビアン当事者であり、不動産のプロが語る「もしも」の話。そして家族の話。めちゃめちゃパワフルで、温かい記事だった。子育てするとわかるけど、子どもを育てる大変さに異性も同性もない。もちろん愛情にも。「同性カップルのどちらかが亡くなったとき、夫婦であれば当たり前に得られるものも得られない」「出産していないパートナーが残されたのであれば、子どもにとって他人となってしまい、完全に孤立してしまう可能性も」。法律が家族の愛情を邪魔してどうする。やっぱり同性婚は早々に法制化されてほしい。
4月23日(水)荻上チキSession「【特集・前半 後半】発達障害と、ニューロダイバーシティの実現への道は?(村中直人x岡田友子)」
発達障害の基礎や実態調査、ニューロダイバーシティの真意や実践の可能性まで。とても勉強になった。そしてソーシャルジェットラグという言葉も初めて知った。人間誰しも生きづらさを抱えているもの。それって自分に問題があるだけでなく、社会構造の想定が狭すぎるから、ということもありえる。全員Mサイズの服に合わせろというのは乱暴、という例えがわかりやすかった。これは必ずしもなんでもかんでも、社会のせいにするというのではなくて。自分の生きづらさを相対化できるようになるだけでも、ずいぶんラクになる、と解釈した。マジョリティもまたこのうえない多様性が広がっている、というコメントも印象的だった。
4月24日(木)映画「シンシン/SING SING」
観た。服役経験者の父親が二人もいた私にとっては、他人事とは思えない作品だった。社会への復帰とコミュニティ、有害な男性性とその克服、人種差別という大きな問題もテーマになっており、いろいろな見方ができる。キャストの多くが当事者で、自身の役を演じているところにも驚き。当事者と演技のプロのハイブリッドを目指した、とパンフレットに書いてあったけど、まさにその通りの見事な演技だった(ちなみにパンフレットも読み応え抜群の一冊だった)。私の父親たちは日本の刑務所だったけれど、彼らにRTAがあったらその後は大きく違っていただろうな、と思ってしまった。とか言ってる私も、日本の刑務所制度について何も知らないな、とも。大仰な事件は起きず、淡々と展開して、一見地味だけれど、どっこいとても見応えがあり、深く考えさせられる名作だった。

シンシンポスター。映画館にて
4月25日(金)ハフポスト「同性カップルの結婚を実現しない国の“注視”発言に「心をえぐられる」。原告が1日も早い結婚平等を訴える」
「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、5つの高裁すべてで「結婚を認めていない民法や戸籍法の規定は違憲」という違憲判決が出揃った。それでも政府は「最高裁の判断などを注視する」と。それって注視じゃなくて無視ですよね、と言いたくなる。結婚は人権の一つ。そして人権は見守られ、見直され、拡張されていくべきもの。なぜなら、そうしないと未来という不確定なものに対応できないから。だからこそ、一人でも多くの人の幸福追求を妨げないように、早急なアップデートが必要なんだと思う。一刻も早く同性婚の法制化を。
4月28日(月)カンパラプレス「パラアスリートが旅に出る⁈――NHK『ぼちぼち旅』がひらく、新しい風景」
NHKで放送される、パラアスリートとコーチが車いすで全国を巡る旅番組。この番組はノーマークだった。観たいなー。車いすユーザーとしての視点や、車いすユーザーだからこその発見や感動がありそう。それはとりもなおさず、旅行というものの新しい可能性でもある。バリアフリーは重要だけど、それだけでは解決できないこと、もしくはそれだけに頼ることで見落としてしまう大切な何かも、繊細に見えてきそうな番組だな。それにしても、TOP画像の瀬立選手の腕の筋肉がすごい。さすが一流アスリート。そして旅に持っていく必携品が独特で面白い。
4月29日(火)荻上チキSession「安田菜津紀さん 桐生市と生活保護 / 漫画「半分姉弟」【Frontline Session】」
漫画「半分兄弟」の話が、とても印象的だった。ミックスルーツの主人公たちから見える日本社会、マイクロアグレッションについての作品らしい。私も本屋で少し本の中を覗いたことがあるんだけど、かなり心構えの必要な本だった。でもそういう本こそ読まないといけないんだよな。せっかく漫画というアートフォームで、読みやすくなっているのだから。
4月29日(火)NHK「病院ラジオ 子ども病院編(東京・府中)」
ファシリティドッグが働いている全国で数少ない子ども病院。がん、遺伝性の疾患、摂食障害など、さまざまな病気と向き合う子どもたちがラジオブースに登場。本当にいろんな命がある。朝からとんでもなく深い番組を観てしまった。私は朝飯を作りながら泣く。妻はそれを食いながら泣く。涙は子どもたちや親御さんに失礼だと分かってはいたけれど、涙が止まらなかった。そしてところどころ笑いがあるのも、またグッときてしまった。
4月30日(水)ロレッタ・ナポリオーニ著 佐久間裕美子訳「編むことは力」
知人に勧められて読んだ。読んでよかった本だった。編み物、編むという行為が、女性やマイノリティなど抑圧されてきた人々とどのように関係し、いかに多くの人々を支え、一部の特権階級と対峙してきたか。さらに今は社会活動にどう関わっているか。産業革命よりも昔から、現代に至るまで、わかりやすく解説されている。ヤーン・ボム。毛糸の爆弾(物語の爆弾というニュアンスもあるのだろうか)。カラフルな毛糸で編んだ作品を公共の場所に飾り、街を彩るストリートアートもしくは社会運動の一種。これを知れただけでも読む価値があった。なんで私はこれまでこのアプローチを知らなかったんだろう。編むと言う黙々とした行為が、これほど大きな声をもっているとは思わなかったよ。

「編むことは力」表紙。編み棒とグリーンの編み物が水彩で描かれている
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