車いすラグビーの配信観戦がスゲー面白かった
ゴールデン・ウィークのたびに、娘の成長を感じる。
今年は、ボーイフレンドと遊びに連れていけ、と命令が下った。
「俺の意見より嫁の機嫌」でやってきた私を見て、パパは女子が乗るロバだと思っている。いや、見抜いている。ちなみにロバは犬くらい賢い。
私は、娘のカレシであるT君のママに連絡し、小四カップルをトランポリン・ジムに連れていった。
この日、本当は車いすラグビーの観戦に行きたかった。

車いすラグビーのシーン。ボールを持った黒ユニフォームの選手を、白ユニフォームの選手二名が取り囲み、行手を阻もうとしている
5月3日(日)に開催された、2026ジャパンパラ車いすラグビー競技大会。国内最高峰の舞台で、パリ2024の金メダリストである日本が海外の強豪とバチバチにぶつかり合う。
娘とカレシを会場に誘おうかとも思ったが、開催地まで乗り継ぎ3回片道100分。まだ小さな足には、さすがに酷だった。
幸いなことに、ライブ配信が予定されていた。ありがたい。
トランポリンと恋のダブル浮遊感にはしゃぐ二人をよそに、私はジムのすみっこで観戦することにした。
パソコンとヘッドホン、準備完了。日本vsアメリカの決勝戦を見逃すわけにいかない。
視聴を始めると、初めにルールを説明してくれるところが嬉しい。競技の面白ポイントが、5分程度にまとめられた親切編集。

Youtubeの画面のキャプチャ。車いすラグビーのことがわかるはじめてガイドと銘打たれている
続く煽りVパートも、見どころと迫力が凝縮されている。
主催関係者が作っているのかもしれない。DIYなクオリティではあるのだけれど、業者丸投げにはない「好き」の熱が随所に宿っていた。それが巧拙を超えた味になっている。

Youtubeの画像のきりぬき。選手たちがボールを奪っている。その上に、これはただの戦いじゃない。ドラマだ。とコピーが書かれている。
スポーツアナウンサーが両国の選手を紹介して、いよいよ試合開始。メジャーリーグやNBAに似た、抑揚のある実況が興奮をかき立てる。
実際、大興奮の展開だった。
決戦相手のアメリカは、食ってるもんが違う巨漢ばかりの重戦車軍団。
車いすラグビーはパラリンピック競技で唯一、「ガンガン衝突してヨシ!」と認められているから、当然ながら無差別級デスマッチになる。さすが、別名「マーダー・ボール(殺人球技)」。
パワー的に不利な日本は、持ち前のスピードと精緻なパスワークを武器にアメリカを翻弄。第三ピリオドまで薄氷の優勢を保っていた。
迎えた最終ピリオド。そこからの日本の運動量が凄まじかった。
プレッシャーをかけるスピードが落ちない。ルーズボールも執念丸出しで追いかける、追いつく。トライの突破力も弱まらない。
ヘッドホンの中に響く、車いすの衝突音とうめき声。歯を食いしばる音まで聞こえそうだった。
しかもその動きには、安定感があった。両チームともキツくなってくる時間帯なのに。
ぶっとい鎖で相手の動きを封じるような、強固に連係された守備が利いていた。
車いすラグビーは障害の軽い選手だけでなく、重い障害のある選手も持ち味を発揮できるルールになっている。
逆に言えば、選手の特性を活かす戦術が、勝利へ直結する。
そして体を張ったディフェンスこそローポインター、つまり重い障害のある選手の主戦場。彼ら彼女らは倒れても倒れても、勝つまで起き上がった。
倒されても立ち上がる。勝負はそこから。それが車いすラグビーの醍醐味。どこかプロレスに通じるものがある。
当然、強豪・アメリカも防戦一方なわけがなく、デッドヒートは続いた。
アメリカのキャプテンは女性選手。
そう。車いすラグビーはフルコンタクト競技にして、まさかの男女混合だったりする。容赦なきジェンダーレス。しかも、その先陣を切っていたのは、女性だった。
冷静に、しかし闘志むき出しでを檄を飛ばす彼女。その表情は、鬼気迫るを通り越して惚れ惚れするものだった。
しかし日本のタフで粘っこいラグビーは、二進一退のペースで着実に相手を引き離していく。ジリジリと勝ちが見えてくる。
相手からすれば、ジリジリと息の根を止められていく、ということでもある。本当に強いヤツは、戦意ごとへし折る。
最終的に9点差で日本が勝利。パラ金メダリストの貫禄だった。
車いすラグビーの試合を配信で見たのは久しぶりだったけれど、とても見応えがあった。
縦横無尽に走る選手を、アップで捉え続けるカメラワーク。クイックプレーやタックルの瞬間がよく見え、髪の先まで躍動しているのが分かる。
ラグビーはしょっちゅう選手が団子状態になるが、密着戦での駆け引きもよく見えるから、「あれは何やってるの?」という瞬間がない。
さらに車いすラグビーは最近、大会運営だけでなく、コンテンツ展開も拡大している。TBSの日曜ドラマ「GIFT」もその一つ。これも配信と相性がよかった。
かなりの話題らしく、Youtubeのコメント欄はファンからのコメントも多く、盛り上がっていた。画面に映る観客席の賑わいにも、ドラマが影響しているに違いない。
観客を楽しませるという点において車いすラグビーは、他のパラスポーツと比べて、いやマイナースポーツまで広げても、先を行っている印象があった。しかし今回は、さらに進化した印象をうけた。
一方で車いすスポーツは、練習や大会ができる施設が少ないという。床が傷む心配や、車いすでも使える設備が整っていなかったりするのが原因らしい。
車いすスポーツを受け入れている施設では、設備損傷は他のスポーツと変わらないという先行データも出ているらしいので、今後増えていくといいのだけれど。
もう少しアチコチで開催してもらえると、娘とカレシを観戦に誘えるのに。おそらく、配信を聴きながらのリアル観戦が、一番面白いはず。
それまではドラマを教材にして、娘とルールを勉強しようと思っている。
きっと、父ちゃんとは出かけなくなる日まで、あとわずか。それまでに「立ち上がる強さ」を、親子で目撃しておきたい。
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